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脱毛症脱毛症

円形脱毛症

円形脱毛症は、ある日突然脱毛し始め、範囲は最小で10円玉くらいから、最大で全身に至るものまであります。多くの場合は半年から1年程で自然に発毛してきますが、繰り返し脱毛が起きたり、脱毛範囲・箇所が増えてしまう場合もあります。
本来なら身体を守る「免疫」というシステムに異常が生じ、自分の身体を攻撃してしまう「自己免疫疾患」と考えられ、成長期にある毛包がリンパ球の攻撃を受けることで頭髪が抜けると考えられています。
どのような原因でリンパ球が毛包を攻撃するようになるかは、明確には解明されていません。
アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患を持つ人の場合、円形脱毛症の発症が多くなるといわれています。

円形脱毛症の種類

  • 単発型・・・脱毛斑が1~2箇所できるもの
  • 多発型・・・脱毛斑が10箇所以上できるもの
  • 全頭型・・・頭毛が全て抜けてしまうもの
  • 汎発型・・・頭毛だけでなく、眉毛やまつ毛、体毛まで抜けてしまうもの
  • 蛇行型・・・側頭部から後頭部の生え際が帯状に抜けてしまうもの

治療

外用治療
ステロイド外用・塩化カルプロニウム外用・ミノキシジル外用など
内服治療
ステロイド内服・JAK阻害剤(※)・抗アレルギー薬・セファランチンなど
紫外線療法
308nmの紫外線を患部に照射して処置する治療法です。
円形脱毛症の他、尋常性白斑じんじょうせいはくはん乾癬かんせん・アトピー性皮膚炎・掌蹠膿疱症しょうせきのうほうしょうなどにも効果的です。
局所免疫療法
かぶれを起こす特殊な薬品(DPCP・SADBEなど)を脱毛部に塗って、弱い皮膚炎を繰り返し起こさせる治療法です。タイプによりますが有効率は70%以上で、現在最も有効な円形脱毛症の治療法です。
ステロイドパルス療法
点滴により、ステロイドを3日間ほどの短期間で大量投与する治療法です。発症後6ヶ月以内の成人患者で、急速に進行する重症例に有効です。ステロイドを大量に使いますので、入院が必要となります。

※2022年6月20日、JAK阻害薬「オルミエント」に円形脱毛症の適応が追加されました。
オルミエントは国際的な臨床治験で治療効果が証明された円形脱毛症に対する初めての内服治療薬です。
内服治療ができるのは、15歳以上の円形脱毛症(過去6ヶ月程度毛髪に自然再生が認められない)の患者さんで、脱毛面積が頭部全体の概ね50% 以上の方です。
オルミエントはJAK阻害薬というジャンルのお薬ですが、JAK阻害薬は免疫の働きの一部を抑える作用があり、免疫が関与する疾患に対して治療効果を発揮します。
国内では2013年から関節リウマチの治療薬として発売されていて、2020年からは中等症以上のアトピー性皮膚炎治療薬として追加承認されています。
また、新型コロナウイルス感染症による肺炎にも承認されています。
円形脱毛では毛包組織に対する自己免疫反応が関与して発毛を阻害していることがわかっていますので、その異常な免疫を抑えて頭髪や眉毛、睫毛などの脱毛の改善が期待できます。

休止期脱毛

休止期脱毛とは、休止期が3ヶ月以上延長したり、成長期から急に休止期に移行したり、休止期から成長期に戻らなかったりすることで、脱毛の発生や、緩やかに毛の密度が低下する変化と考えます。
休止期では抜けた毛根は棍棒状(マッチ棒のような形)です。

休止期脱毛の種類

急性休止期脱毛
成長期が急激に休止期に移行するため、易脱毛性は著明となります。精神的なストレスや栄養不足、外科手術、出産などをきっかけに起こるといわれています。 新型コロナウイルス感染症罹患後の脱毛は、急性休止期脱毛で、原因の一つとして、感染によるサイトカインの大量放出により免疫に異常をきたすことが考えられています。
慢性びまん性休止期脱毛
6ヶ月以上かけて進行し、頭頂部にとどまらず頭部全域に脱毛が及び、薄毛になります。甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症、栄養障害、膠原病など、内臓疾患によるものがあげられます。薬の副作用により休止期脱毛を生じるものもあります(降圧剤・ホルモン剤・インターフェロン製剤など)。

瘢痕性脱毛症

外傷ややけど、感染などで頭部が瘢痕化し、髪が生えてこなくなる脱毛症です。毛を産生するのに重要な「毛包」と呼ばれる部分も同時に障害を受けることになり、髪の毛の再生ができなくなってしまいます。円形脱毛症との鑑別のため、皮膚生検で判定することもあります。
脱毛範囲の拡大を防ぐ目的でステロイドが使用されます。

先天性乏毛症(縮毛症・乏毛症)

先天性乏毛症は、生まれつき髪の毛の量が少なく縮毛となる疾患で、常染色体劣性遺伝(※)の形式をとる遺伝性疾患です。日本人には1万人~2万人に1人といわれています。
先天性乏毛症を発生させる要因(原因遺伝子)はいくつかありますが、日本人における先天性乏毛症の多くは、LIPH遺伝子の変異によるものだと考えられています。
このLIPH遺伝子が異常を起こすために、必要なLPA(リゾホスファチジン酸)を生成できず、毛の脆弱化や成長障害、毛包形成異常などが起こり、乏毛症を生じます。
日本人の先天性乏毛症の9割はこのLIPH遺伝子の異常(欠損)が原因といわれています。
特定するには、遺伝子検査を行います。検査方法は、髪の毛や血液をわずかに採取し、特定します。(現在、遺伝子検査は行っておりません)
先天性乏毛症のメカニズムは解明されてきているため、近い将来は薬によって改善が可能になることが期待されていますが、治療法はまだ確立されていません。遺伝子治療(遺伝子に対してアプローチする方法)や、LPA(リゾホスファチジン酸)と同じ働きをする物質を探ることなど、多角的にその治療法が模索されているさなかです。

※常染色体劣性遺伝
両親から受け継いだ遺伝子はすべてペアで持っているので、どちらか片方に変異があってももう片方の遺伝子がカバーして必要なタンパク質を作っているため問題はおこりません。しかし、たまたま同じ部分に変異がある劣性遺伝子を持つ両親の間に、変異が2つ揃った子どもが生まれる場合があります。その場合には必要なタンパク質が作られないので症状が出ます。この両親に生まれる子では、25%(1/4)の確率で症状が出る可能性があります。特徴として、子どもに症状が現れた場合は両親のどちらもがその病気の保因者であると考えられます。男女差はありません。親族に同じ症状を持つ人がいなくても、生まれてくる子どもだけが遺伝性疾患による症状を持つことがあります。ちなみに誰でも何らかの変異遺伝子を数個持っており、これらは1個では身体に症状を起こすことはありません。

AGA・FAGA

AGA

AGAとは、AndroGenetic Alopecia(男性型脱毛症)の略で、遺伝と男性ホルモンが関与する、全頭・頭頂部に生じる進行性の脱毛症です。

治療

「フィナステリド錠」による脱毛治療
フィナステリド錠(先発医薬品:プロペシア錠)は、男性型脱毛症用薬として世界で初めて認められたお薬です。AGAの人の頭皮部分に多くあるとされる男性型脱毛症の原因物質であるジヒドロテストステロン(DHT)という物質が作られるのを抑えることで髪の毛の成長する周期を正常化し、抜け毛を抑えます。
「デュタステリドカプセル」による脱毛治療
デュタステリドカプセル(先発医薬品:ザガーロカプセル)の作用機序は、フィナステリド同様、AGAの原因であるDHTを生成するのに必要不可欠な(5α-リダクターゼ)を阻害することでDHTの生成を抑制し、AGA5α-還元酵素を改善します。5α-還元酵素にはⅠ型とⅡ型があり、フィナステリド錠はⅡ型しか抑えることができないのに対して、デュタステリドカプセルはⅠ型とⅡ型の両方の働きを抑えることができるのが特徴です。

FAGA

FAGAとは、「Female(女性の)AGA」(女性男性型脱毛症)のことです。AGA(男性型脱毛症)は男性に起こる進行性の脱毛症のことを示すのに対し、FAGAは文字通り、女性に起こる脱毛・薄毛のことを示します。卵巣や副腎で作られている男性ホルモンにより、毛を作る細胞が男性ホルモンの影響を受けやすい体質を持っていると、男性型脱毛症が生じます。
女性男性型脱毛症の発症時期は30歳前後に気づく方もいますが、さらに高年であることが一般的です。

治療

治療には、ミノキシジルなどの外用薬を使用することが最も効果的です。ミノキシジルは毛母細胞の成長を促すことで発毛作用が認められている成分です。
日本では、1%ミノキシジル溶液が一般用医薬品として承認・発売されましたが、海外では2%溶液の1日2回塗布、5%の溶液の1日1回塗布が女性用として一般的に使用されています。

担当医紹介

寺尾 美香 医師(脱毛症専門外来)(金曜日9:30~12:30)

略歴

2001年
筑波大学医学専門学群卒業

専門医・資格等

  • 日本皮膚科学会専門医

所属

  • 日本アレルギー学会会員
  • 日本研究皮膚科学会会員

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